ミル キク アソブ 星筐 プログラムノート

曲解説 9月17日のプログラム

星筐 〜ひびきとかたちのピクニック〜
インスタレーション型立体音響体験ワークショップ

ひがきともや(檜垣智也) Aural Sphere

2023年 初演

「Aural Sphere(聴覚の世界)」は、9分程度のアクースモニウムのための作品です。たくさんのスピーカーの集合体であるアクースモニウムは、スピーカー・オーケストラとも呼ばれ、空中に音による演出を行います。わたしの作品では、スピーカーから鳴る音のみによる、目では見ることができない純粋な聴覚世界をお楽しみいただけば幸いです。

今回は、先月8月11日に前橋で開催された視覚障害者を支援する活動を広める「まゆだまネットフェスタ2023」のワークショップの取材で得た音から竹の音をピックアップし、竹の聴覚的価値を見出そうとしました。前半は人間が竹を制御しようするユーモラスなシーンから始まり、竹が意志を持ちはじめお互いに響き合う世界へ移行していきます。後半は竹の楽器である笙の音を中心に使っていますが、その音はまるで人間の呼吸、生きていることそのものが光になったような美しいものです。

【録音演奏】
伊勢友一(竹、声)
とうのたまみ(笙、竹)
船本貴美子(ピアノ、竹)
ひがきともや(檜垣智也)(シンセサイザ)
「まゆだまネットフェスタ2023」のワークショップ参加者の皆さん(竹)

【ライブ演奏】
アクースモニウム:ひがきともや(檜垣智也)

音響:牛山泰良(hirvi)
協力:東海大学教養学部芸術学科檜垣智也研究室生有志(石原遼太郎、髙松慶実、菅沼 光、半田有希、片山颯大、藤井聡大、徳 和成)、hirvi

とうのたまみ(東野珠実) 星筐IV_9

音楽の楽しみは、響きの宇宙に星座を見いだす歓びではないか、と私は考えます。『星筐』(ほしがたみ)は、このコンセプトをもとに創作した雅楽合奏のための作品にはじまり、以後、連作として様々な形態の表現を模索しています。

さて、奈良で発掘されたキトラ古墳に記される星宿のように、古来、人々は無数の星々に意図的な縁を読み取り、天と人とのつながりに特別な思いを抱いています。一方、私はまだ文字も読めなかった子供の頃、送電線を五線譜に、その向こうの星を音符に見立てるアソビを楽しんでいました。

この作品は、そんな音楽のアソビを当代のメディアに載せ替えてみようという趣向で、演奏する日時の星図に五線譜を重ね、大小の星々が音符として浮かぶよう作譜をし、《星図譜》と名付けました。

演奏する時間や場所によって、星空は見えませんが、星は常に天上を運行しています。心の目でその輝きを見出していただければ幸いです。

【演奏】
笙:とうのたまみ
打楽器:伊勢友一
アクースモニウム:ひがきともや(檜垣智也)
クラリネット:すごうちほ(菅生千穂)[友情出演]

雅楽古典曲 ひょうじょうのちょうし(平調調子)

《調子(ちょうし)》は、五行思想(古代中国に端を発する自然哲学の思想で、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説)に基づき季節や方位、色を音楽で表します。雅楽上演時の最初に奏されるこの曲は、象徴される風情と共に、楽器のみならず、そこに集う人々に“こころの調律”を促し、共にする時間に慈しみを覚えるきっかけを与えてくれるように思います。

本日は、秋のしらべである平調(ひょうじょう)の調子を演奏します。

打楽器独奏


【演奏】
伊勢友一

秋の空に クラリネット独奏

どこか⼈恋しく,どこか懐かしく,いつのまにか思い出に浸り,空想してしまう。
そんな秋の歌,メロディを,クラリネットの⾳⾊にのせて,少しずつ紡いでみます。

静かな,静かな,⾥の秋…
すすきの中の⼦,いちにのさんにん
はぜつりしてる⼦,さんしのごにん…
ゆうやけこやけの ⾚とんぼ…
みあげてごらん 夜の星を…

さて,みなさまには,どんな景⾊や想い出が映るのでしょう

【演奏】
すごうちほ(菅生千穂)[友情出演]

とうのたまみ作曲 ミル キク アソブ

「ミル キク アソブ」は、みわみちよさんとのコラボレーションに際して、彼女が命名したこのプロジェクトのタイトルです。

見ること、聴くことは、人が世界を認識するための手段です。私たちは、芸術表現を通じて、その先にある心に触れること、心で遊ぶことをコンセプトとしました。

「ミル キク アソブ」は、すべて人の心のなかで生まれること、心の中から起こすことです。
さあ、この魔法の言葉を声や音で発して、アソビましょう!

【演奏】
声:会場の皆様/東海大学教養学部芸術学科檜垣智也研究室生有志

立木寛子 文 とうのたまみ作曲 朗読音楽 みえなくなったちょうこくか

三輪途道(みわみちよ)さんの彫刻教室に通われた作家の立木寛子さんが、「みえなくなったちょうこくか」という絵本を制作されました。

みるってなんだろう?
みえるってどんなこと?

絵本を朗読音楽に仕立てるにあたって、私は、このことばを頭の中でリフレインしていました。
そして絵本には、みわみちよさんが視力をなくす前から見えなくなったのちの彫刻が配されていますが、本日は、絵本の言葉に声や楽器による響きのかたちを添えて皆様にお届けします。空間全体に散りばめた言葉と音の肌触りをお楽しみください。

【演奏】
朗読/笙:とうのたまみ
打楽器:伊勢友一
アクースモニウム:ひがきともや(檜垣智也)
声:東海大学教養学部芸術学科檜垣智也研究室生有志/会場の皆様