星筐 ー声・和琴・雅楽三管のためのー

平成13年度文化庁舞台芸術創作奨励特別賞、および国立劇場作曲コンク ール優秀作品賞受賞作品

星筐 Hoshigatami ー声・和琴・雅楽三管のためのー

作品のコンセプトは雅楽を取り巻く無限の宇宙から音の星座を浮かび上がらせることにあります。楽曲の構造は幾何学におけるペンローズ・タイリング理論の応用をして自己相似的で非周期的な自己生成システムを、雅楽の伝統的な語法を基に音楽的に多次元展開します。その原理は二項の関係性、すなわち二音の<絆>に端を発しますが、これはまさしく雅楽以前にさかのぼって日本人の意識の根底にある音楽観に重なり合うように思われるのです。

さて、雅楽は中国伝来の五行思想に裏付けられる世界観を投影しますが、一般に五芒星に象徴される平面的イメージから脱し、さらに空間において立体的に自己生成を繰り返す音響のうちに、さまざまな星の絆を見出していただけることと思います。
東野珠実記

この作品では、雅楽の三管(持替えで大箪築も)と和琴に、母音唱法による歌が入る。全曲を通じ、雅楽の歌い物と舞楽に特徴的な慣用語句が、伝統的な脈絡での関係をたもちつつ、あらたな関係を模索する試みをも聴きとることができる。とくに後半部分の連続する笙の音塊=合竹や、拍節感を意識させる和琴の弾法。さらに龍笛と甑築の執拗な追奏によって、高密度の音響的極相が形成されている。一転して和琴と笙によるコーダ(星雲と題する)に入る。こうした作曲者独自の構成法や楽器法によって、雅楽はまたあたらしい意味をつけくわえることとなった。曲名は、星の籠を意味する。作曲者は、この曲のコンセプトを、雅楽を取り巻<無限の宇宙から、音の星座をうかびあがらせることにあるとする。スコアには段落ごとに、星合、星籠、彗星などの標題がみえる。冒頭は涓滴(けんてき)と題され、これは杜甫の<倦夜>(けんや=けだるい夜) 第二句からの起用か。「重露成消滴(重なれる露は消滴となり)、稀星勿有無(まばらなる星のたちまち有りてまた無し)」と。
解説:長廣比登志


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